特別支援学校教員向け校内研修活性化支援講座(校内研究の推進講座【後期】)

  本講座の主な内容

【講義】校内研究のまとめ方
    ~校内研究の評価や研究成果の活用について~

【実践発表】校内研究の実際
    ~参画意識を高め、学校組織を活性化させるための工夫~

【研究協議】研究成果の次年度への活用について

【講義】校内研究のまとめ方 ~校内研究の評価や研究成果の活用について~

※スライド等はクリックすると拡大してご覧いただけます。

   
 
  研究のまとめの時期こそ、研究がもっとも充実し、その成果が身に付いていく機会である。
  研究全体にわたって評価することで、研究の成果や課題、有効性等を明らかにする必要がある。また、校内研究の計画段階から、「何を評価するのか」という評価の観点・項目等を明確にしていくことが必要である。
研究の成果と課題を検証するための方法として、研究の具体的な目標と、研究の結果とのギャップを客観的にとらえることが考えられる。研究の結果として、目標への到達状況を明確にして、目標に近づけた原因と到達できなかった原因を分析する。
    研究成果の発信の工夫
研究紀要・研究集録を作成するうえで大切なのは、キラリと光るもの、「なるほど」と納得させられるようなものが含まれているかどうかである。例えば、日常の実践にすぐに役立つような指導法や、児童生徒の実態を的確にとらえられるような独自開発の調査法、繰り返してはならない失敗例などが挙げられる。
    Research(調査・分析)では、現状の把握と課題の焦点化を行う。自校の強み(成果を上げている取組)や弱み(児童生徒や教職員等が抱えている課題)を把握し、取組の優先度を見極めるようにする。
Vision(構想)では、自校の強みを生かしながら、1年後~数年後を見通した学校運営構想や子ども像等を共有するための取組を行う。
  

【実践発表】校内研究の実際 《県立盲学校》


 
盲学校(視覚支援学校)を取り巻く全国的な課題として、児童生徒数の減少、障害の重度・重複化、単一視覚障害の児童生徒の減少等がある。そのため、点字や自立活動の歩行指導など、盲学校が100年以上培ってきた視覚障害の専門性を維持していくのが難しくなっているという状況にある。そこで、本校では、今年度の研究主題を、「視覚障害教育の専門性の向上をめざして ~幼児児童生徒のニーズに応じた教育実践の充実~」とした。
盲学校では、視覚障害の教育の専門性の維持・向上を目指した研修の取組を五つの「専門部」が行っている。専門部には、すべての教員がいずれかの部に所属し、学部を超えて縦割りで編成されている。
各専門部の取組は以下のとおりである。
◆点字部:点字指導力向上-点字盤・タイプライターの使い方、点字のレイアウトについての研修
◆ロービジョン部(「弱視」と言われる、普通文字を拡大して用いる生徒に対する指導について研修を行う部):児童生徒に対する視機能検査に関する研修
◆福祉情報部:便利グッズの校内・外部HPの更新、就学奨励費基礎理解研修(自由参加型研修)、バリアフリー通信の配布についての研修
◆歩行部:アイマスク歩行実技等についての研修
◆パソコン部:ワイヤレスキーボードの活用方法、デイジー教材について
「自由参加型研修」とは、各専門部が企画し、希望を募って実施する研修である。
今年度は福祉情報部が就学奨励費について、ロービジョン部が疑似体験を交えた視野や眼球運動について、歩行部がアイマスク歩行体験といった研修を実施した。
◆「各専門部内における課題の共有」
 専門部においてチーフを中心として取り組むべき課題を設定し、事例研究や体験型研修などを通して深めることができた。
◆「授業における専門部の役割の明確化」
 点字指導・歩行指導を中心として、教職員に対して指導法などの助言を行うことができた。また、生徒の指導場面において指導のモデルを見せることが、実際的、効果的であったと思われる。
◆「学部を越えた研修」
 専門部は縦割り編成であるため、研修の実施は情報交換・共通理解の場となる。
研究授業を実施する上では、互いに授業を参観しやすくするために、学校としての環境改善を考える必要がある。
スライドは、校内アンケートの「授業における実践力をどのような方法で向上させたいですか?」という問いに対する結果である。「研究授業」と「授業の相互参観」を合わせた数は全回答数の50%になった。研修の場として、実際の授業を活用することがポイントであると思われる。
本校の専門部はスペシャリストを念頭に置いた研修組織と言える。しかし、全校的な視野に立って考えると、今後はそれぞれの分野で「核」となる教員をどのようにして育成するかが課題である。そうして次の「核」となる教員が中心となって専門部内の研究・研修を進めていくような組織作りがなされいくことが理想であると考える。
全体で取り組む研究・研修体制を発展・充実させていくために、自由参加型研修を全体参加型研修へ広げていくことも考えられる。
また、各専門部の取組を校内HPやLANを活用して全体へ周知するような取組も必要である。さらに、これまで作成された指導案や資料、教材・教具のデータベース化なども今後検討していく予定である。
教員の研修ニーズの中で、専門部がカバーできていない研修内容としては、「教材教具」と「触察(視覚に障害のある児童生徒、特に全盲の児童生徒は教材教具や実物を触ることによる学習方法)」が挙げられる。
  

【実践発表】校内研究の実際 《県立諫早特別支援学校》


 
研究内容を全教職員に正確に周知するために、各研究グループに研究部員をはじめ、研究に関連する分掌主任を配置した。
研究の時間の確保、時間の効率的な運用という点で、小グループを編成し、そこで検討した結果を持ち寄るなど、SGAを機能させることが有効であった。
研究授業は、自由参観方式で行っている。学部やグループに関係なく誰でも見に行くことが可能である。ただし、グループ研究を円滑に進めるために、自分が所属するグループの研究授業には必ず参加するよう呼びかけている。そのために、他の授業の体制をとることができるように学部に協力をお願いしている。なお、参観できない教員のために研究授業の様子はビデオに撮影しておき、授業研究会前の休憩時間を利用して上映するようにしている。
授業研究会ではワークショップを積極的に取り入れた。その際、ワークショップで多様な意見を出しやすいように、授業者反省を最後に持ってくるようにした。
授業の力量を高めるだけでなく、学校組織全体の専門性を向上させるためにも、すべての教師が積極的に参画・協働できるワークショップ型の授業研究会は効果的だった。
ワークショップの成果を集積し、改めて授業分析シートに整理した。なお、授業分析シートは、校内LANですべての教職員が確認できるように工夫した。
協議型研修とワークショップ型研修のよさと課題を整理し、さらに校内研究を活性化させるための方向性を検討した。
限られた時間であっても、ワークショップの成果を共有する時間を設けることが大切である。また、ワークショップの中で出される意見が拡散しすぎないように、協議の柱を説明し、焦点化させることが重要である。