今日,学校内外において不適応行動を示す児童生徒のことが教育上の大きな課題の一つとなっています。いじめや不登校,暴力行為の“低年齢化”,ささいなことで短絡的,突発的な暴力に走るケース,さらに人命にかかわる重大な事件等,様々な問題があげられます。
そういった問題行動の背景の一つに人間関係の希薄化が指摘されています。
このような現状を踏まえ,児童生徒が他者とのかかわりの中で自己存在感や成就感等を味わい,自己肯定感を高めていくための開発的・予防的な取組を行っていくことは今後ますます大事になってきます。また,教師一人一人が,すべての児童生徒への関心をいっそう強め,不適応行動の予兆やそのような言動があった際には,その言動を理解し,適切に対応するための知識や技術を身につけておくことも必要です。
それらの取組や児童生徒とのかかわり方に,教育相談の考え方や技法を効果的に活用することができます。
そこで,本調査研究では,教師が学校における指導や援助の中で,教育相談の考え方や技法を,どのように生かしていけばよいのかという視点に立って研究を行いました。
この研究の成果を参考に,各学校で教師と児童生徒,児童生徒相互の望ましい人間関係を構築するための指導や援助に生かしていただければ幸いです。
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研究構想図 |
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Ⅰ 教育相談に関して知っておきたいこと
項 目 | 活用できる場面等の例 | ||
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Q1 | 学校における教育相談の意義や役割をどのように考えればいいのでしょうか? | 教育相談の意義と役割 | ・年度始め(児童生徒への対応の確認) |
Q2 | 教育相談の開発的な側面,予防的な側面,問題解決的な側面とは,どういうものでしょうか? | 教育相談の三つの側面 | ・年度始め(児童生徒への対応の確認) |
Q3 | 児童生徒に接していく場合,どのような点に留意すればいいのでしょうか? | カウンセリングマインドとリーガルマインド | ・年度始め(児童生徒への対応の確認) |
Q4 | 児童生徒と望ましい人間関係をつくっていくためには,どのような点に留意すればいいのでしょうか? | 教師と児童生徒との人間関係づくり | ・年度始め(児童生徒への対応の確認) |
Q5 | 話を上手に聴くためには,どのような点に留意すればいいのでしょうか? | 傾聴技法 | ・家庭訪問 ・個人面談 ・保護者への対応 |
Q6 | 悩みや問題を抱えている児童生徒を指導・援助していく場合には,どのような点に留意すればいいのでしょうか? | 解決志向 | ・個人面談 ・保護者への対応 ・生徒指導 |
Ⅱ 児童生徒理解に関して知っておきたいこと
項 目 | 活用できる場面等の例 | ||
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Q 1 |
児童生徒の不適応行動を発達段階からとらえると,どのような見方ができますか? | 発達段階 | ・不適応行動を示す児童生徒への対応 |
Q2 | 心にかかわる疾病には,どのようなものがありますか? | 心にかかわる疾病 | ・不適応行動を示す児童生徒への対応 |
Q3 | 学校で活用できる心理テストには,どのようなものがありますか? | 客観的な児童生徒理解の方法 | ・不適応行動を示す児童生徒への対応 |
Ⅲ 教育相談の技法の活用
項 目 | 活用できる場面等の例 | ||
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Q 1 |
児童生徒の自己理解を促すとともに心の状態を把握できる技法には,どのようなものがありますか? | エゴグラム | ・児童生徒を客観的に理解したいとき ・学級の実態を把握したいとき |
※ エゴグラム用紙 | |||
Q2 | 自分自身で自分の行動等を振り返り,自己理解,他者理解を促していくことができる技法には,どのようなものがありますか? | ロールレタリング | ・進級,卒業時など,新たな気持ちを持たせたいとき ・問題行動を起こした児童生徒への事後指導 |
Q3 | 児童生徒の人間関係づくりに有効な技法には,どのようなものがありますか? | 構成的グループ・エンカウンター | ・いじめの予防や学級の団結を高めたいとき ・保護者会を工夫したいとき |
Q4 | 児童生徒が対人関係について学ぶための技法には,どのようなものがありますか? | ソーシャルスキルトレーニング,アサーショントレーニング | ・対人関係のトラブルの予防や学級内でいざこざが絶えないとき ・不適応状態にある児童生徒への援助 |
Q5 | 児童生徒が作品づくりを通して,自らを表現し,受け入れていくような技法には,どのようなものがありますか? | コラージュ技法 | ・集団への所属感やまとまりをつけたいとき ・言語表現が苦手な不適応状態にある児童生徒への援助 |
Q6 | 児童生徒がストレスの予防や対処の仕方について学ぶための技法には,どのようなものがありますか? | ストレスマネジメント | ・ストレスの予防やストレスを解消させたいとき ・不適応状態にある児童生徒への援助 |
Ⅳ 教育相談の技法を活用した授業実践
Ⅴ 参考・引用文献
参考・引用文献一覧 |
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