平成22・23年度調査研究
『不登校の理解とその対応~中1ギャップの解消を目指して~』
1.研究主題について | ||
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不登校の未然防止に重点を置いた「中1ギャップ」の解消を目指した対応の在り方を中心に調査研究を行い、そこで得た研究成果として、欠席状況に応じた対応法や、児童生徒同士の人間関係づくりを促進し社会性を向上させていくための指導法、また小学校と中学校の連携の在り方を学校現場に提供することを目的としています。 |
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平成20年度の小学校6年生の不登校児童数と平成21年度の中学校1年生の不登校生徒数を比べると、約4.5倍になっています。いわゆる「中1ギャップ」と言われる現象です。 また、国立教育政策研究所生徒指導研究センターが調査し、提言している「中1不登校の未然防止に取り組むために」(平成17年)によれば、中学校1年生での不登校生徒数の半分は、小学校4年生~6年生の間に不登校か不登校傾向であったことが明らかになっています。 そこで、当教育センターでは、平成22年度より2か年にわたって、研究協力校に協力をいただきながら、不登校の未然防止に重点を置いた「中1ギャップ」の解消を目指した対応の在り方を中心に調査研究を行いました。 |
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2.研究構想 | ||
研究の大きな柱は、2本です。 1つめの柱が、早期発見・早期対応を目的とした取組である「欠席状況による対応」と「Q-Uアンケートの活用」です。 2つめの柱が、 未然防止を目的とした取組である「良質なコミュニケーションをより多く保障すること」と「年間を通じての構成的グループ・エンカウンター等の実施」です。 この他にも、「基礎的情報の収集と分類」「対人関係への配慮」などの取組も行っています。なお、研究するにあたり、平成17年に発表された国立教育政策研究所生徒指導センターの「中1不登校の未然防止に取り組むために」を参考にしました(この内容については、国立教育政策研究所のwebページを参照くださいhttp://www.nier.go.jp/shido/centerhp/3.htm)。ここに提言されている内容は、研究協力校の取組に生かされています。 |
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3.研究の実際 |
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●基礎的情報の収集と分類 | ||
実際に使用した調査票はこちらです。小学校から中学校へ調査票の引き継ぎをしっかりと行うとともに、多くの小・中学校でも行われていますように、指導する上で配慮すべき事項も引き継ぎを行います。中学校は、「経験あり群」の生徒については、入学直後から特に気を付けていくことになります。 | ||
●対人関係への配慮 | ||
新年度になり、3月末の引き継ぎをもとに、学級編制を工夫します。そして、4月初めには、学級開きでゲーム等も交えた自己紹介を行います。本調査研究では、構成的グループ・エンカウンターとして取り組んでいます。この構成的グループ・エンカウンターについては、こちらを参照ください。 |
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●年間を通した取組 (1) 欠席状況による対応 ① 欠席への対応 先に紹介した、国立教育政策研究所生徒指導研究センターの「中1不登校の未然防止に取り組むために」(平成17年)によれば、欠席状況をもとに様々な対応をすることの重要性が指摘されています。 |
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「経験あり」群の場合は、各月において、累積による欠席3日目で必ず家庭訪問をし、次に、チーム編成・会議を行います。もちろん、欠席1日目、2日目は、担任による電話、手紙、家庭訪問のいずれかを行います。 「経験なし群」の場合は、対応が2つに考えられます。1つめの対応では、累積による欠席3日目で必ず家庭訪問をします。もし、累積5日目になった場合は、チーム編成・会議を行います。2つめの対応としては、連続欠席3日目で、家庭訪問を行うとともに、チーム編成・会議を行います。 このように欠席日数に十分に気を付けることで、早期発見・早期対応を心がけ、児童生徒を支援していきます。 |
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② チームによる対応 | ||
まず、上図のAのように、担任を中心にした対応を行います。担任が把握した情報を担任一人で抱え込むのではなく、必ず、管理職、学年主任、生徒指導主事、生活指導主任、不登校対策コーディネーターに報告・連絡・相談を行います。 次に、上図のBのように、チームで対応を行います。学年の朝の打ち合わせや休み時間、放課後などに、各担任が管理職及び学年主任に報告・連絡・相談し、不登校対策コーディネーター及び学年関係職員、管理職を中心に対応をします。家庭訪問が必要であると判断した場合は、できるだけ、担任、学年主任など2人以上で実施します。 場合によっては、スクール・カウンセラーと連携して、対応します。また、定期的に、生徒指導部会等で児童生徒の情報交換及び対応を話し合う場を設定しています。 3番目に、上図のCのように、不登校対策委員会による対応を行います。これは、Bのチームを拡大して、管理職、主幹教諭、教務主任、生徒指導主事、生活指導主任、養護教諭、特別支援教育コーディネーター、学年主任、学級担任、スクール・カウンセラー等で対応について協議するものです。その不登校対策委員会で実際に使用したシートがこちらです。 |
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③ 個人記録票 |
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(2) 良質なコミュニケーションをより多く、「1日30分、授業の中で友達とかかわる」場の保障 児童生徒の学級不適応の改善要因の一つである「対人関係の育成」を目指して、児童生徒同士が互いにかかわる場を日常的に保障することで、学級への安心感、級友への親和感・信頼感を育み、学級への適応を図ります。1時間の授業に、最低5分間、友達とかかわる場を保障できれば、5分×6校時で30分間となります。つまり、どの児童生徒も毎日、1日に30分間は、少なくとも友達とかかわることを保障できます。 |
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(3) 年間を通じての計画的な構成的グループ・エンカウンター等の実施 構成的グループ・エンカウンター等を月に1回、学級活動の時間や短学活で定期的に実施し、教師と児童生徒、児童生徒同士の関係づくりを通して、児童生徒の教師への信頼感を育むとともに、学級での安心感、級友への親和感・信頼感を育み、学級への適応を図ります。 取組例としては、進級して出会う新しい仲間や担任との生活に対する不安を軽減するとともに、これからの学級生活への期待を高めることをねらいとし、「なんでもバスケット」「バースディ・チェーン」「名刺交換」「担任プロフィールクイズ」などの活動をしています。なお、研究協力校とともに作成した年間活動計画は、こちらにありますので、どうぞご活用ください。 ●Q-Uアンケートの活用 Q-U(Questionnaire-Utilities)アンケートとは、早稲田大学の河村茂雄教授が開発したもので、児童生徒の学校生活での「満足度と意欲」、「学級集団の状態」を調べる質問紙です。児童生徒個人の情報と学級集団の情報をもとに、不登校になる可能性の高い児童生徒や、いじめを受けている可能性の高い児童生徒、学校生活の意欲が低下している児童生徒の早期発見につなげることができます。 ●夏季休業中の取組 ●小・中連携に向けて ※小・中合同プログラムの実施 |
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4.成果と課題 | ||
【成果】 | ||
●欠席状況による対応について ●小学校と中学校の連携 |
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【今後の課題】 | ||
●欠席状況による対応について ●児童生徒同士の人間関係づくり ●小学校と中学校の連携の在り方 |