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   長崎県教育センター Web情報 第385号 (平成27年3月6日)
     企画課 情報化推進班
     

学校における著作権

~卒業記念DVDの制作について~

    

 学校現場では卒業のシーズンを迎えています。ICTの発展に伴い、近年では自作DVDも簡単に作成できるようになりました。クラスや部活動で担当していた児童生徒との思い出を詰め込んだ記念DVDの制作に取り掛かっている先生方も多いのではないでしょうか。
 我が国の著作権法では、著作物の利用について様々な取り決めがなされており、学校等の教育機関における著作物利用についても定められています。学校における著作物の利用については、「文化の発展に寄与する」という著作権法の目的から、他人の著作物を利用しやすくするための措置がなされています。今回は卒業記念DVDをテーマに、著作権法と照らし合わせつつ、学校における著作権について考えてみましょう。

 1 卒業記念DVDでの利用が想定される著作物
(1)写真(静止画)データ
 まず、入学式、体育祭、文化祭、修学旅行など、様々な学校行事で撮影された写真データをスライドショーで流しつつ、思い出を振り返る、といった作品をについて考えてみましょう。素材として利用されるこれらの写真データの著作権はだれ(どこ)にあるのでしょうか。 
 職務上作成する著作物の著作者(第15条)では、
 法人その他使用者の発意に基づきその法人等の業務に従事する者が職務上作成する著作物(プログラムの著作物を除く。)で、その法人等が自己の著作の名義の下に公表するものの著作者は、その作成の時における契約、勤務規則その他に別段の定めがない限り、その法人等とする
と規定されています。 
 
 従って、学校に所属する職員が撮影した写真の著作権は
○当該学校法人
○国、県、市町などの地方公共団体
に帰属することになります。ただし、学校と契約している業者が撮影したものについては、別段の契約がない限り、撮影した業者が著作者となりますので、注意が必要です。
 また、著作権とは直接関係ありませんが、人の顔が写っている場合など、個人を特定できるような写真については、個人情報や肖像権など、別の問題が発生するケースがありますので、事前に該当者の許可を得る必要があります。
 
(2)映像(動画)データ
 では、映像データはどうでしょうか。これも写真データと同じで、学校の職員が録画したものであれば著作権は学校法人等に帰属します。
 ただし、写真データと異なり、映像データには「音声」が含まれる場合がほとんどです。例えば、
○文化祭のカラオケ大会で、他人の楽曲を歌っている映像
の場合、録画された映像に「他人の著作物」である楽曲が含まれているため、その権利者に対して許可を得る必要があります。
 
(3)音楽(音声)データ
 スライドショーや動画に合わせて、市販の音楽データを利用するというケースについてはどうでしょうか。CDWebからダウンロードした楽曲などのディジタルデータを素材として利用することが技術的に可能であっても、前述の映像データのケースと同じで、他人の著作物である市販音楽データは、権利者に無断で利用することはできません。
 
 2 著作物等の「例外的な無断利用」について
 他人の著作物を利用する際には、原則として権利者の許可が必要です。ただし、著作権法の目的の一つである「文化の発展に寄与する」ことを根拠として、権利者に許可を得ずに「例外的な無断利用」ができる場合があります。
 学校における教育活動については、
 
 学校その他の教育機関における複製等(第35条)
 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。)において教育を担任する者及び授業を受ける者は、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には、必要と認められる限度において、公表された著作物を複製することができる。
を拠り所として、例外的な利用が認められています。以下にその条件を示します。
 
<条件>
営利を目的としない教育機関であること
授業等を担当する教員等やその授業等を受ける学習者自身がコピーすること
 (指示に従って作業してくれる人に頼むことは可能)

授業の中でそのコピーを使用すること
必要な限度内の部数であること
すでに公表されている著作物であること
その著作物の種類や用途などから判断して、著作権者の利益を不当に害しないこと
 (ソフトウェアやドリルなど、ここの学習者が購入することを想定して販売されているものをコピーする場合等は対象外)

慣行があるときは「出所の明示」が必要
 
 では、今回のテーマである卒業記念DVDの制作について、上の例外規定にあてはまるか検討してみましょう。
 ①②は教員又は児童生徒が作成するということであればOKですね。③はどうでしょうか。③では
○授業の中で利用すること
が明記されています。第35条における「授業」とは一般的に「学校における教育活動全般」を指すとされていますので、通常の授業の他に、学校行事や部活動等で他人の著作物を利用することは認められています。
 しかし、卒業記念DVDは学校を卒業していく児童生徒がプライベートで視聴するものですから、この条件③には該当しないことになります。
 補足ですが、④の必要限度内での複製の具体的な数は「1クラスに所属する児童生徒の人数」を基準としており、概ね50名程度となっています。
 
 3 他人の著作物を利用したDVD等の作成に関わる申請事項について
 それでは、市販の音楽データをDVD等の素材として利用する際の許可申請について紹介します。
 日本における音楽著作物の管理団体としては日本音楽著作権協会(JASRAC)が有名です。JASRAC公式サイトには今回のようなケースを想定したページがあります。
○卒業記念CDDVD等を制作されるときの著作権手続きについて
 http://www.jasrac.or.jp/info/dl/video001.pdf
 JASRACと契約を結んでいる音楽家の著作物については、このような手続きを経て、使用料を支払うことで、契約範囲内での音楽の利用が可能となります。
 
 冒頭で述べましたように、私たち教職員は学校で働いているという特性上、著作権に対しての意識が希薄になりがちです。「他人のもの」を利用させてもらっている、という意識を持ちながら、著作物が利用しやすい環境に感謝するとともに、児童生徒たちに著作権について伝えていくことが大切であると感じます。
○非商用映像ソフト-使用料シミュレーション
 http://www.jasrac.or.jp/info/create/calculation/non-business.html

DVD・ビデオなど映像ソフトの製作
 http://www.jasrac.or.jp/info/create/video.html

<参考>
○著作権テキスト~初めて学ぶ人のために~ 平成26年度版(文化庁長官官房著作権課)
 http://www.bunka.go.jp/chosakuken/text/pdf/h26_text.pdf

JASRAC公式Webサイト
 http://www.jasrac.or.jp/

○使用料計算シミュレーション(録音)
 http://www.jasrac.or.jp/info/create/calculation.php

○使用料の計算方法(CD・録音テープ)
 http://www.jasrac.or.jp/info/create/cal01.html

CD・テープ・ICなど録音物の制作
 http://www.jasrac.or.jp/info/create/index.html

○非商用 適用の範囲と使用料の計算方法
 http://www.jasrac.or.jp/info/create/non-business.html