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長崎県教育センター Web情報 第362号 (平成25年 8月23日) |
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保護者と良好な関係を築くために
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皆さんは、日頃、保護者の方々と良好な関係を築くことができていると感じていますか。 |
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百貨店で長年にわたり、お客様相談室長を務めていた関根眞一氏は、教師の保護者へのかかわり方の特徴について、教師が保護者からの申し入れに対応するための研修をほとんど受けていないことや、“教える”姿勢を児童生徒以外にもついつい発揮してしまいがちなことを、著書の中で指摘しています。 |
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学校の教育主体は言うまでもなく児童生徒ですが、児童生徒の後ろには保護者がいます。保護者と教師は、共に児童生徒の育ちを支援するチームの一員です。しかし、保護者からの申し入れの中に不満や怒りがあるのではないかと感じたとき、教師はどのようにかかわっていけばよいのでしょうか。以下に、基本の2点を確認します。 |
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□ 保護者とつながるための聴く技術を持つ |
□ 保護者と目標を共有する |
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■ 保護者とつながるための聴く技術
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① まずはねぎらいのひと言を |
相談時の第一声は、時間を割いて来てくれたことや、電話をかけてくれたことへのねぎらい、また、お礼のひと言から始めましょう。 |
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② 傾聴を心がける |
自分が話し始める前に、「相手の眼で見て、相手の耳で聞き、相手の立場に立って考えてみる」という共感の姿勢で、丁寧に保護者の話を聴くように心がけます。話の腰を折らずに言葉を聴いていく中で、保護者の言葉や感情の裏にある、子どもに対する「思い」や「願い」を読み取ることが大切です。 |
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③ 「心理的事実」には謝罪、「客観的事実」には調査を |
話の内容が、仮に、学校で起こったことに対する苦情であったとしましょう。教師は学校内のできごとを多く目にしているので、『自分の知っている事実が正しい』と信じがちです。そこで、保護者の思いに十分に耳を傾ける前に、『その事情はですね…』と説明を始めがちになるのです。 |
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保護者がそのことで何か『嫌な思いをした』、という心の中の「心理的事実」に対しては、まず素直に謝ります。その上で、「客観的事実」については時間を取って調査し、説明をしていく冷静さが必要です。言葉の使い分けの一例ですが、「そうですね」という相づちは、相手の言うことを全面的に肯定するものです。それに対して、「そうですか」という言葉を使えば、相手への共感を示すと同時に、起こった事態を冷静に考えようとするものの言い方をすることができます。 |
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■ 保護者との目標の共有 |
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① 感情の裏の「思い」や「願い」を言葉に |
保護者の学校に対する不満や怒りについて聴いていく中で、児童生徒や学校に対する保護者の「思い」や「願い」がわかってくることがあります。そのようなときは、『子どもさんに○○な子になって欲しいと思っていらっしゃるのですね』と、その思いや願いを言葉にすることで、教師と保護者にとって、“子どもの健やかな成長”が共通の目標であることを確認していきます。一般的に言えば、怒りや不満は願いが満たされないことから起こる感情ですが、それは、願いが別の形であらわれているとも言えるのです。 |
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② 解決方法を共に考える |
保護者の願いを知り、教師の願いも伝えた上で初めて、問題の解決について協力しながら考えていけるようなかかわりが生まれます。 |
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③ 終わりのひと言 |
相談、面談の終わりに、『何かわからないことがあれば、学校の方へいつでもご相談くださいね』のひと言があると、保護者の学校に対する心理的なハードルはずいぶん低くなるものです。 |
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参考文献 |
小野田正利(2006)『悲鳴をあげる学校』旬報社
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小林正幸、有村久春、青山洋子編著(2004)『保護者との関係に困った教師のために』ぎょうせい |
嶋﨑政男(2001)『教育相談基礎の基礎』学事出版 |
関根眞一(2013)『なぜあの教師は保護者を怒らせるのか』教育開発研究所 |
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