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長崎県教育センターWeb情報 第358号 (平成25年5月24日)

平成24年度 長崎県公立学校教職経験20年経過教員研修における校内研修の報告

 

 

 本県の教職員研修の基本方針を定める「長崎県公立学校教職員研修体系要綱」の一部改訂により、教職経験20年経過教員研修(以下、20年研)は教職経験15年経過教員研修(以下、15年研)へと移行され、研修内容も変更されることとなりました。これは、学校教育を推進するミドルリーダーとしての自覚と責任感及び実践力を高めることを、より早い段階で実現することを目指しての変更です。

 これにより15年研は平成25年度から実施(20年研は移行措置として平成29年まで15年研と同時開催)されることになりますが、研修内容についてはそれに先んじて平成24年度の20年研から変更されました。

 平成24年度の受講者429名は、図1のような流れで、個別研修(校内研修)に取り組みましたので、その概要をお知らせします。
 

  図1 20年研(H25年度からは15年・20年研)の全体の流れ

 
 

1 個別研修における実践の領域・分野 

 20年研の受講者は、各所属校で教科指導や生徒指導などの領域・分野の教育課題についての個別研修(校内研修)に取り組みました。

教育課題には、長期間にわたって継続して取り組んでいるものや、早急に解決を図らなければならないもの、そして、これまで取り組んではいないが、じっくりと取り組んでいこうと考えていた課題など様々あります。20年研受講者は、そうした課題の中から、各自の課題意識に基づき、同僚と課題意識の共有を図ったり、協働して解決を図ったりしたいと考える課題に焦点を当て、校内研修に取り組みました。

図2では校種ごとに、どのような領域・分野に取り組んだかを分類しています。

  図2 校種ごとの実践の領域・分野

〈各校種の特徴〉

 小学校・中学校では、ともに教科指導を中心に多様な取組があり、自校で行われている校内研修に深くかかわる形での実践も数多く行われました。特別支援教育コーディネーター経験者が、特別支援教育に関する知見を職員で共有するような取組も多く行われました。

 また、小学校では、養護教諭や栄養教諭等を中心に、所属校の教育課題を意識した健康指導・食育指導に関する取組が行われ、中学校では、生徒指導、進路指導、学級経営についての取組が行われました。

 高等学校では、教科指導の取組が半数近くあり、生徒指導と進路指導も合わせると約6割になりました。小・中学校とは異なり、学年分掌等の運営の取組が多く見られたことも高等学校の特徴です。

 特別支援学校では、自立活動や障害特性に応じた指導についての取組が多く見られました。所属校の子どもたちの支援のあり方について、自分の持っている知見をもとに研修を行い、ともに考えて実践に移すような取組が見られました。

2 活動の範囲 

20年研受講者が取り組んだ校内研修の活動範囲は、所属校の職員全員で取り組んだものから、校内の若手教職員数名という少人数を対象としたものなど様々でした。中でも、学年会や教科会など日常の業務と結びついた小グループでの研修(SGA:Small Group Activities)が多く行われました。

校内研修を推進していくことのねらいの一つは、「同僚性」の構築を図ることです。「同僚性」の構築を意識した校内研修の実践の過程で、教職員間のコミュニケーションが深まり、よりよい人間関係も構築されます。そのような状況になれば、学校教育目標の実現という目的のもと、同僚と学校の課題を共有し、その課題解決へ向けて、協働した取組を行うことができるようになると考えます。

図3では校種ごとに、どのような範囲で校内研修に取り組んだかを分類しています。

 

 図3 実践した校内研修の範囲(対象)

〈各校種の特徴〉

 小学校では、全職員を対象とした校内研修を実践した取組が一番多く、次いで学年を対象とした取組が多く見られました。

 中学校では、小学校と比較すると学年を対象とする割合が低く、教科会・分掌の割合が高くなっています。

 高等学校では、教科会を対象とした取組と若手教職員を対象とした取組で過半数を超えました。その他、分掌や学年における取組も見られました。

 特別支援学校では、学部会を対象とした実践が多く行われ、次いで学校全体、学年会という順番になっています。

 3 個別研修における実践例

 20年研受講者の具体的な取組例を校種ごとに記しますので、今後、校内研修を企画する際の参考にしてください。

①小学校教諭 

 <思考する力を育て、確かな学びにつながる言語活動の工夫>
◎思考力・判断力・表現力を高めるために、児童が少人数で活動する場において、目的を明確にした言語活動を仕組むことで、学びを深め合う取組を追究した取組。

 <ファシリテーターとして授業研究会への積極的な参画>
◎検証事項に沿った意見を多く引き出し、授業研究会をより充実させるために、KJ法を用いた授業研究を行い、研究発表会に向けた成果と課題を明らかにした取組。

 <複式学習指導における「教えて考えさせる授業」の可能性を求めて>
◎複式学級での算数科指導において、両学年とも「教えて考えさせる授業」で行う実践は少ない。デジタル機器を活用することで、その可能性を追究した取組。

 <個別の教育支援計画等の活用及び要支援児童事例検討会の充実>
◎教育支援計画等を誰でも作成できるよう「作成手順マニュアル」作りに取り組む。また、インシデントプロセス法を取り入れた要支援児童事例検討会を実施。

 <職員の資質向上と学校力向上を目指して>
◎標記テーマは、教育の今日的課題である。そこで、全職員向けの「校内スキルアップ研修会」及び教職員としての基礎的基本的内容である「若手研修」を主催。


②中学校教諭

 <ICT機器を活用した授業づくり>
◎ICT機器を効果的に活用することが生徒の学力向上につながると考え、活用のねらいを「知らせること」「理解させること」に焦点化した授業改善の取組。

 <教師のリーダーシップとチームワークを向上させる生徒指導をめざして>
◎生徒指導主事として、部員一人ひとりに責任を持たせることによるリーダーシップの向上、また連携した指導によるチームワークの向上を目指した取組。

 <学力向上に生かす進路指導>
◎キャリア教育を充実させることで、生徒自身が学習の必要性を自覚し、積極的に学習に取り組むことが期待できると考え、研究組織をつくり調査研究を行った取組。

 <「構成的グループエンカウンター(SGE)」を用いた人間関係づくり>
◎SGEを教師自らが体験し、その効果を知り実践意欲を高めること、SGEの理論を知り、今後の学級経営や授業に生かすことを目的とした校内研修の取組。


③高等学校教諭

<国語科の3年間を見通した指導について>
◎教科会のメンバーとの協議を重ねて、課題の洗い出しや解決策の検討、指導の方向性など、学校独自の教科指導の在り方をメンバーと共有した実践。 

<朝ドリルのさらなる有効な取組を目指して>
◎分掌と教科会との連携を図り、両者が協働して生徒の基礎学力の向上に向けた研修を企画運営するとともに、生徒アンケート等の分析等を行った実践。

 <私の学級経営>
◎学級経営に関する実践や体験について、全ての教員が提供し合う場を設け、学年単位での協議や実践発表等を通して、学級経営の在り方を全教員で共有した実践。

<特別支援の体制づくり>
◎特別な支援が必要な生徒の実態を生徒及び職員のアンケートで調査するとともに、全職員参加の研修会を企画し、学校としての支援内容を全職員で共有した実践。


④特別支援学校教諭

<地区特別支援教育連絡協議会設立に向けた効果的な取組>
◎「長崎県特別支援教育推進計画」に基づく各地域単位の支援体制の整備・充実に向けた当該特別支援学校【事務局校】の取組(連絡協議会の立ち上げ)。 

<盲学校の専門性についての考察>
◎視覚障害教育の専門性の維持・継承に関するアンケート調査を当該校職員に実施し、その分析・整理を通して校内研究体制の在り方について考察。


⑤養護教諭・栄養教諭  

<学校保健委員会の運営(小学校)>
◎思春期の入り口にさしかかった4~6年生の保護者や教職員が、ともに学べる場としての研修会を分掌部会の職員と協働して立ち上げた取組。 

<食育指導を通してマナーの向上を図る(中学校)>
◎全校一斉に行う「バイキング給食」を活用してマナー向上やおもてなしの心を育むため、各学年の給食担当者と協働した取組。